税務署に行った。
見慣れていたはずの道があまりにも変わり果てていて戸惑った。
駅前の開発で、たくさんの店が姿を消し、町中が荒れて見えていた。

昔アルバイトをしていたコンビニももうない。

思えば、もう生まれ育った故郷には十数年帰っていない。
親戚のうちに行った母の言葉では
見る影もなくかわってしまったという。


変わらない風景を探すというのは
じつは難しいことなのだろう
思い出は残っているのに、現実は形を変えて
自分の前に立ちふさがる



税務署で私を担当してくれた女性は
どうやらまだ新人さんらしく、私の質問に対し
奥のベテランさんの指示を仰ぎながら丁寧に応対してくれた。
すがすがしい笑顔だった。

書類の提出を終え、建物を出ると
はじめて見る角度の風景の中をバスが走っていった。

１９歳の自分がそのバスに乗って観に行った映画館はもうない。